社員の販売士2級取得へ支援の取り組み

パナソニック コンシューマーマーケティング株式会社(PCMC)は、パナソニックのデジタル・AVCと生活・美容・健康家電商品の販売とそれらの施工・メンテナンス・修理サービスまでを取り扱っている企業である。
同社の事業は、地域電器専門店部門(LE社) 、量販店部門(CE社)、生活業態店部門(VE社)、ソリューション&エンジニアリング部門(SE社)、修理・部品サービス部門(CS社)、eコマース部門(eコマースビジネスユニット)の6分社体制で運営されている。
同社の所属で、CE社に勤務する米林一郎氏より、PCMCにおける社員の販売士2級取得への支援の取り組み等について伺った。

米林氏

販売士資格との出会い

私は、PCMCに統合される前の「大阪ナショナル家電販売」に入社2年目に、社員必須資格として位置づけられていた販売士2級を取得しましたが、当時は合格すると、社長からの祝辞と表彰状が授与されていました。
その後、勤務先企業を含めた全国各地の販社が合併・統合され、PCMCが発足し、販売士2級は取得推奨指定であるものの受験は自己啓発の一環でという位置づけになっていました。私は営業責任者として部下たちの取得を促進する中で、一念発起して、販売士1級取得に向けて学習を開始し、2011年には販売士1級に合格、販売士資格は流通に携わる者にとって必須であると再認識し、その後、日本販売士協会の登録講師資格も取得しました。私は、販売士資格との出会いにより、人生が変わったと感じています。まず、会社や仕事への理解がかなり深まったこと、自分が実施してきた業務内容を体系的とりまとめられたこと、外部の講師仲間と流通や小売について学びあえたこと、、、などです。

社内での販売士2級取得支援の取り組み

登録講師となった2011年、所属していた量販店部門のCE社を対象とする私塾として、人材育成、営業力強化、自己啓発を目的とする「米林塾=販売士塾」をスタートさせました。最初は7名の塾生でスタートした、この取り組みが幹部の目に留まり、翌2012年には、幹部会議で販売士資格の有用性と業務での活用事例が取り上げられ、2013年から販売士2級が社内で公認資格化・販売士塾を人事主催の研修扱いとするなどの制度変更が決議されました。「成長を支える若手人材の育成と流通環境の変化に対応した強いフィールド力の確立を図るため、販売士2級検定を取得する米林塾を全国で継続推進する」旨、定められたのです。
販売士2級を学ぶことで、営業力や提案力が向上する効果が見込め、担当拠点での「ソリューション営業」の実現が可能となることが期待されています。
  ①担当店の客観的な分析力と的確な提案力が養成され、店舗の見方が変わる
  ②マーケティング用語に精通し、経済誌・専門紙等の専門用語も理解でき、
   情報の深読みが可能となる
  ③流通のトレンドの把握を通じ、将来を見据えた顧客視点の提案が可能となる
社内での公認資格化を機に、販売士2級取得への支援制度の紹介と受講者募集が行われたことから、受講者・合格者が急増し、販売士2級は、社内で再度脚光を浴びることとなりました。
販売士2級取得者数は、2011年から2014年までの4年間で188名となり、販売士塾が始まる前(2010年までの数十年間)の186名を上回っています。

テレビ会議

【テレビ会議システムを活用した講座】


海外への赴任

2015年4月に、パナソニックとしてアジア地区の販売強化のためマレーシアにマーケティング本部が設立されました。私もほぼ同時に、マレーシアのマーケティング部門へ出向異動となり、主にASEAN地区での現場販促(リテールマーケティング)の責任者となりました。海外においては、商品情報ツール開発、営業社員向けのノウハウ伝授、店頭でのデモンストレーション販売などを企画し、アジア各国をまわりながら進めてきましたが、ここでも私の支えとなったのが、販売士資格で学んだ講座内容です。現場経験だけをいくら積み重ねても、それを他者に伝えきることはできません。現場の経験を効率的、かつ的確に伝えるには、体系化した内容にすることが重要で、そのためには理論と実践を統合させることが必要です。そうして約2年間の海外部門勤務を終えて2017年4月からは国内部門に復帰していますが、海外部門時期においてもチームメンバーが受講希望していただけ販売士講座をさせていただき、4名が販売士2級に合格をされました。

【講義する米林さん】


【受講生の反応より(2名の塾生からヒアリング)】

質問:販売士の資格はお仕事にどのように役に立っていますか?
Aさん:
私は最近オープンした「超大型家電量販店」の担当責任者となりました。巨大店舗ですので、販売士で学んだマーケティング(ストアコンパリゾン)の実践を通じて、競合店と差別化するための提案を実施したことで、今までとは一味違う営業活動が実施できました。「こいつやるな!」と思われる営業活動のために、販売士で学ぶ知識やノウハウは重要だと思います。
Bさん:
私共はメーカー系列の販売会社ですので、どうしても”プロダクトアウト”の発想になりがちです。しかし、この販売士を学ぶことで、小売業の立場で考えられるようになりました。今までは自社商品の販売アップを中心に考えていましたが、“マーケットイン”の視点で考えられるようになり、お店と一緒になってお客様の望む品揃え・展示・販促をトータル的に提案しています。

今後の抱負

販売士2級について、最終的には、社員全員に取得してもらうことが目標ですが、少なくとも、営業部門の社員には全員取得してほしいと思っています。その資格取得の効果については、取得すれば即・営業成績があがる「魔法」のようなものとは考えておりません。学んだことを活かす心がけで、常に学習し、努力することで、知識や情報を深めることができ、必ず幅広い視野が身に着き、営業力や提案力も格段に向上すると確信しています。たとえば、お得意先店舗に訪問して、有力客向けの取組み事例を見ても、知識がないとそのこと自体に気づけないことも多いですし、“ロイヤルカスタマー戦略”という用語を知っているかどうかでも理解度に差が出てきます。元々のねらいや背景までを詳しく知るほうが、仕事の進め方もおのずと変わるのではないでしょうか。
本年6月に、来年2月の2級検定試験に向けて、社内講座の案内を発信しました。10月まで受講者を募集し、12月から2月まで講座を実施する予定です。海外赴任の間、受験者へのサポートが十分できず、合格者が減少してしまい反省しておりますので、次回の2月の検定試験では、多くの社員が合格し、無償で講義をしている中での唯一のルール「合格したら焼肉を私にご馳走する!」を各地で実現できれば(笑)と願っています。

【販売士塾開講以降の販売士2級合格者数】

2011年度 5名、2012年度 52名、2013年度 92名、2014年度 39名、2015年度 29名、2016年度 7名 6年間合計 224名

【米林一郎さんのプロフィール(2017年7月現在)】

パナソニックコンシューマーマーケティング株式会社 CE社 量販店営業推進センター 参事
(兼 パナソニック株式会社 アプライアンス社 日本地域CM部門 参事)
1級販売士 (一社)日本販売士協会 登録講師
その他資格 家電製品総合アドバイザー、環境社会検定(eco検定)

【参考】リテールマーケティングレポート

「提案力アップにリテールマーケティング(販売士)検定試験を活用」
 ~パナソニック コンシューマーマーケティング㈱の事例~(2015年3月)

記事はこちら(当協会サイト「リテールマーケティングレポート」)