競争意識、授業態度に好影響

販売士講座の現状と課題―浜松大学

高度職業専門人の育成を目指す浜松大学
高度職業専門人の育成を目指す浜松大学

本学は1988年4月、浜松市で初の文科系4年生大学として開学し、現在では、大学院、経営情報学部、国際経済学部から構成されている。さて、近年の少子化の進行、高校生の進路の多様化、大学数の増加等により、多くの大学では、厳しい経営環境に直面しており、魅力ある大学づくりに向けて、様々な取り組みが行われている。

本学では、1998年度に大幅なカリキュラム改革を行い、国家資格の取得を通して高度職業専門人を育成するというビジョンを確立した。新カリキュラムでは、通常の授業科目の中に、中小企業診断士、税理士等の資格試験や日本商工会議所の簿記、販売士、商業英語等の検定試験の受験をサポートする科目を設置し、合格に向けて親身な指導を行っている。

○「大学冬の時代」を背景に

「大学冬の時代」の到来を背景にして、本学の学生は、景気低迷下、多くの企業で通用する能力の取得、独立志向がここ数年顕著であり、専門能力を客観的に証明出来る資格取得に取り組んでいる。そのため、資格取得を目的とした授業科目には、多くの学生が受講し、真剣に学んでいる姿が目に付く。

しかし、多くの大学における資格取得に向けたサポートシステムは、ほとんどがエクステンションセンターにおける外部の専門学校への外注であり、単位取得も出来ず、ダブルスクールで多額の出費をしている学生も多い。

○専任教員による取り組み

筆者は、中小企業診断士、社会保険労務士、1級販売士の資格を有し、コンサルティングファーム勤務を経て、本学の資格取得サポートのカリキュラム改革に共鳴して、1998年助教授に就任した。そこで、翌年度からスタートした「経営実務」の授業科目を級販売士の受験対策に活用することにした。

その理由としては、大学で学んでいる専門科目が生かせる、普通高校出身者でも努力すれば何とか合格出来る、中小企業診断士試験のファーストステップになる、卸売・小売業への就職に有利になる等が挙げられる。

○「飽きさせない」を心がけて

授業では、ハンドブックの各章ごとに徹底した絞り込み学習を導入し、キーワードを事例に基づいて解説する、問題演習を同時に行うことにより学生を飽きさせないことで確実に理解させることを心掛けている。

4月から授業を開始し、7月の3級販売士試験合格を第1目標に、10月の2級販売士試験合格を授業の最終目標に設定し、3級合格をバネに2級へチャレンジするように動機付けている。

具体的効果としての合格者数、合格率は年度によって異なるが、過去最も多かったのは、2000年7月の3級販売士76名合格(合格率79%)、同10月の2級販売士22名合格(合格率41%)であり、その他は概ね全国平均レベルの合格率を維持している。

また、当該授業は浜松商工会議所の認定を受け、2級販売士養成講習会として実施されていることも特色となっている。

こうした取り組みは、地元の静岡新聞に「カリキュラム改革の成果あがる」と報じられただけでなく、2000年8月22日付の日経流通新聞のフロントページでも大きく取り上げられ、大学関係者だけでなく多方面から問い合わせがあったことを付記したい。

一方、学生間でも「彼が合格したのなら私も」という、いい意味での競争意識の高揚、自分への自信、真面目な授業態度、試験直前の友人同士の勉強会等の教育効果が現れており、研究室への学生の来訪も増加している。

○大学としての個性を訴求

本学では、2003年4月から、学生の目的、目標に合ったコース制を導入し、ハードル資格、目標資格、挑戦資格を設定する中で、大学としての個性を訴求して勝ち残りを目指すことになった。筆者の属する経営理論コースでは、1年次販売士3級・2級、2年次販売士2級、3~4年次中小企業診断士を目指している。

「資格取得のための勉強は、例えば、経営学の基礎知識をマスターすることである」との考えに立ち、今後は更なる教授方法の改善、革新に取り組み、販売士試験合格者数の増加・合格率の向上を目指したいと考えている。そして、販売士資格を取得した本学卒業生が、実業界で顕著な業績をあげてくれることを心から期待している。

(浜松大学経営情報学部助教授 酒巻貞夫)