わが校が取り組む「販売士」育成活動(1)

千葉商科大学

本誌では、「販売士」育成に熱心に取り組んでいる大学、専門学校、高校を紹介する新企画“わが校が取り組む「販売士」育成活動”を連載いたします。

千葉商科大学は千葉県市川市にキャンパスがある、創立80周年を迎える歴史と伝統のある大学で、学生が取り組む重要な資格取得講座の一つとして、生活協同組合が販売士講座を運営しています。今回は同大生活協同組合の亀井隆専務理事と学生の方々からご寄稿頂きました。

◎創立80周年の歴史と伝統ある大学

千葉商科大学は、東京都と千葉県の境、江戸川沿いの市川市にあり、東京駅まで、JR総武線で約20分という便利なところです。大学は、東京都内にあった巣鴨高商を前身とし、

戦後市川に移り新制大学としてスタートしました。まもなく創立80周年になる歴史と伝統ある大学です。
1995年に元政府税調会長を務められた加藤寛先生(前慶応義塾大学教授)が、千葉商科大学の学長に就任され、現在も在任されています。加藤学長は、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスの学部長時代にも、革新的な大学改革を実践されたことは有名ですが、千葉商科大学に来られてからも最先端な改革を次々に実行されています。

学生は、未来からの留学生なので、未来で必要とされるツール「3つの言語」を身につける必要があると提起されました。3つの言語とは、「コンピュータ(人工言語)」「外国語(自然言語)」「簿記(会計言語)」です。1年生より必修科目とし、少人数クラスで、集中的に授業は行われます。

また、エクステンションセンターやキャリア教育センターをつくり、資格取得の講座を開設しています。3つの言語の習得のために、英検、TOEIC、シスアド、簿記の講座や、 その他様々な講座を学生に提供しています。2000年からは、インターンシップ制度の導入、最近では、1年~4年までのキャリアプログラムを体系的に実施しています。こうしたキャリア教育は、2006年度の文部科学省の「現代GP(グッド プラックティス)」(現代的教育ニーズ取組支援プログラム)にも選ばれました。

◎千葉商大の生活協同組合活動

千葉商科大学には、1972年に設立された生活協同組合があります。食堂事業、文具やパソコンなどの購買事業、教科書などの書籍事業、旅行や運転免許・チケットなどを斡旋するサービス事業、アパート紹介をする宅建事業、さらに共済・保険事業といった大学生活全般をサポートする様々な事業を担当しています。

生協は、営利を目的とせず、組合員の生活の改善、生活の向上を目的としています。つまり、学生は、大学生活をより充実させるために生協に加入し、利用し、運営にも参加しています。生協を設立した当時(1970年代)は、経済的な生活を改善することが、最大の関心事であり生協の役割でした。安い定食やレコードの2割引、教科書の1割引などは、生協の看板でした。

1980年代以降の豊かな時代を経験した最近の学生の要求は大きく変化しています。食べるものは、いつでも手軽に手に入る時代、家には、オーディオ製品から衣料品など不足するものはない時代です。携帯電話やファッションに関心を示すように「物 モノ」ではなく「事 コト」に価値を見出しているといわれます。携帯電話は、友達とメールする「事」が目的です。また、雇用環境の変化の中、学生の関心事は、就職や将来についても大きな関心と不安を示しています(大学生協の学生生活実態調査より)。

こうした学生(組合員)の関心・要望の変化に応えるために、千葉商科大学生協では、いち早く1993年より、学生の学びと成長を応援する教育支援事業を開始しました。

最初に取り組んだのは、「使える英語」を身につけたいという要望への対応でした。使える英語のレベルチェックが目的のTOEICを活用した英語学習サポートです。

英語学習サークル「ちば商科村塾」をつくり、仲間どおし刺激し合い、学習(トレーニング)をし、TOEICテストで成果をチェックしていくという方法です。3年経過したところ、TOEIC600点を超える学生が10名以上に達しました。その頃(1995年)はまだ、今ほどTOEICがポピュラーではありませんでしたので、マスコミにも注目されました。朝日新聞ほか月刊雑誌にも取り上げられた程です。

そのほか、生協で販売しているパソコンを使いきれるようにパソコンサポートやパソコン講座を実施してきました。そして2001年より「生協の資格取得・スキルアップ講座」を開始しました。販売士講座もこの頃よりスタートしました。

生協のこの分野への政策としては、①大学が実施しているキャリア教育を補完し、学生により幅広く学ぶ場を提供していく、②生協組合員の新たなニーズに応える新規事業(キャリア形成支援事業)という位置付けで取り組んでいます。

生協で提供しているプログラムは、①自己診断アセスメント、②資格取得講座、③資格検定試験(団体受験)、④就職支援講座、⑤社会体験プログラム(海外語学研修等)など多岐にわたっています。生協の担当者は、キャリアコンサルタント(CDA)の資格を取り、企画立案しています。

◎販売士は学生が取り組む重要な資格

販売士講座開設のきっかけは、学生の就職先を調べたところ、過半数を超える学生が流通業、サービス業に就職していることがわかり、販売士の資格は、千葉商科大学の学生に合った資格と判断したことです。

当初は、専門資格スクールと提携し、販売士3級講座を運営しました。合格率は、約80%と平均よりは良い成績でしたが今ひとつ、親身な学生サポートにはなりませんでした。昨年より、講師と生協で直接運営する方式に切り替えました。日本販売士協会の登録講師である北田久雄先生に、講座を担当していただいています。

昨年度2回の販売士3級試験合格率は、いずれも95%でした。合格者には、量販店(ヨドバシカメラ)の視察研修などの場も提供し、流通業をより深く学び、就職活動に生かすというサポートができるようになりました。

販売士3級講座の受講者は、5年前開始当時は70名位でしたが、最近は高校で3級を取得してくる学生が増えているので、40名位の受講者となっています。

今後は、販売士を千葉商科大学の学生の取り組む重要な資格の一つとして位置付けて紹介していきたいと考えています。来年度からは、販売士2級及び1級講座の開設を準備しています。また、推薦入学試験で早く入学が決まった新入生に向けた、入学前サポート教育の一環として、販売士3級講座も検討しています。大学の専門教育を受ける前に、販売士3級の内容を学んでおくことは、大学での勉強をより有意義なものにすると確信しています。

■販売士を学んで、お店を見る目が変わった 商経学部2年 原田 真治
私は今まで商品の並べ方の名称、商品と店内の色彩の組み合わせ方、各店舗がどういう組織体系を取っているか、などといった専門的な事を全く知りませんでした。しかし、販売士3級を取得するための勉強をしたことにより、様々な知識を得ることができました。今までと違った見方でお店を見るようになったのも変化の一つです。

例えば、「この商品の並べ方はここに適してないのでは?」、「このお店はこういった顧客を販売対象にしているんだな」、「この店の店員さんの接客は、販売士で勉強したような良い接客が出来ている店だな」などといった見方ができるようになり、無意識のうちに店の分析をするようになりました。

また、新聞やテレビで企業戦略を扱った番組や経済情報などを、興味や関心をもってよく見るようになりました。それだけではなく、大学の授業でも販売士で勉強した所が出題されたりするので、とても役に立ちました。

私が販売士の勉強の中で一番面白かったのはマーケティングでした。販売促進の仕方、売り場作りの考え方などを勉強していると、「確かにこのタイプの店舗はこういう売り場作りをしているな」などと、自分の知っているお店を照らし合わせながら勉強をしていたのでとても楽しかったです。

しかし、普通高校出身の私にとっては、どの科目も初めて知る事だらけで、試験までの期間も短い上に覚える事が多く大変でしたが、集中して勉強し無事に合格することができました。勉強方法としては、参考書を一通り読んだ後、繰り返し練習問題を解き、間違えた解答は同じ間違いをしないために、再度参考書や解説で確認を取るという方法で進めていきました。こうすることで効率よく勉強することができました。

将来販売という職種に就かなくとも、販売士試験で学んだ知識は日常生活の中で消費者という逆の立場に立って、買い物をする時に役立つ事が多いと思いました。また、資格を取るということは自分のスキルアップになり、合格の喜びと達成感が次へのチャレンジにもつながると私は思っています。そして、この気持ちを忘れぬよう、現在、販売士2級を取得するために勉強をしています。

■販売士資格を取ろうと思った理由 商学部1年 橋本 健一
私が販売士を取ろうと思ったのは高校生の時でした。アルバイトをしていたスーパーが、お客さまに対してとても親切に対応していました。私は人と接する仕事に就きたいと思っていたので、販売員の姿に憧れていました。

「スーパーや小売業で仕事をする上で、販売士という資格があると活かせる」と学校の先生に聞きました。私は、その話を聞いて千葉商科大学に入学して、販売や流通の事を勉強したいと思いました。

販売士という資格は、三つの級に分けられています。3級は売場の販売員のレベルで、販売員として最も重要な接客マナーや販売技術といった接客業務に関する知識が身につきます。

2級は売場の管理者クラスのレベルで、店舗管理に不可欠な従業員の育成や指導、仕入や在庫の管理といった知識が身につきます。

店長や経営者クラスのレベルの1級は、トップマネジメント全般に関する商品計画や商品予算の策定やマーケティング政策の立案、人事、労務、財務管理といった知識が身につきます。

そして、受験者数は年々増加しており、小売業従業員だけでなく、製造業や卸売業、サービス業、さらには流通業界へ就職を目指している学生にまで広がっています。これまでに約64万人の方々が合格され、販売士として流通業界の各分野で活躍しています。

この販売士検定試験の合格者には、販売士という称号を付与していますが、販売士はまさに販売のプロといえると思います。激動する流通業界で勝ち抜くため必修の資格・検定であり、流通業界で唯一の公的資格として社会的にも高い評価を得ることができます。

今回、大学在学中に販売士3級を取ることができてとても良かったです。私がこの資格が取れたのは親身になって教えてくれた講師の先生や資格を取得できる講座を開講してくれた大学のおかげだと思います。これからは、販売士2級に向けて頑張りたいと思います。今まで、ありがとうございました。

■販売士検定試験のたいへんさ 商学部1年 杉山 裕隆
自分は販売士のことを何も知らないで講座を受講しました。ただ何となく就職活動の時に使えると思い3級を取ることを決め、友達と授業を受けました。

初めての授業では小売業の類型を学び、内容の濃いことを教えてもらい、授業の後半は模擬問題をたくさんやりました。模擬問題は毎週、授業の後半に行い、答え合わせや特に重要な問題などを丁寧に教えてくれました。その後、学校の図書館や家で復習をこまめにやることにより、自分に知識と自信がつきました。

そして、7月8日に実施された第58回販売士検定試験に受験しました。試験は思ったより難しくたいへんでしたが、分かる問題は確実に答え、分からない問題もそれなりに考え、時間もすべて使い、解答用紙は全部うめることができました。合格にあまり自信はなかったのですが、合格していたのでとても嬉しかったです。
 
3級に合格したので、販売士の意味を家のパソコンで調べてみました。販売士は、流通業界で多様化・高度化した顧客のニーズを的確に捉え、豊富な商品知識や顧客に配慮した接客技術を武器として、ニーズにあった商品を提供するとともに、商品の開発や仕入、販売、物流などを効率的かつ効果的に行うことができる販売のプロだと書いてあるのを読んで、合格の実感が湧いてきました。
 
3級合格をきっかけに2級も検定試験を受けることを決めました。しかし、2級は販売に関する専門的な知識を身につけるので、とてもたいへんですが、3級で学んだことなどが基礎となり覚えているので、今も役に立っています。

■販売士を学んで、サービス業に就職したい 経済学部2年 道脇 昭彦
販売士資格を取得しようと思ったのは、大学の講義でやった流通業や小売業に関する内容に対して、これからの仕事はどのような事をするのかという興味を持ったことと、卒業後にサービス業の仕事をやりたいと思っていたからだ。
 
また、サービス業の会社に就職した時に困ることの無いように、最低限必要な知識を在学中に学び、その知識を生かすことのできるように努力することが大切だと考えたことも、販売士資格を取得しようと思った理由に挙げられる。そして、この資格を活かして小売関係を含むサービス業や経営コンサルタントなどのコンサルタント業の仕事をやりたいと考えている。
 
サービス業に関しては、顧客に対して最大限の満足を提供することを目標にすると同時に、サービスに対する安全性や利便性などの事も配慮しなければならないという仕事の意義に基づいて、今まで学んだ流通や小売に関する知識、顧客と接する時の接客マナーなどを活かすことで、顧客の信用を得られるような仕事をしたいと思っている。
 
コンサルタント業に関しては、性格の異なる企業同士のパイプ役となって交渉を行い、企業の買収、合併を進めることで企業価値を高めることや、新規事業の開拓を行うために必要な方法について助言をするという仕事の意義に基づいて、顧客のニーズに対して、十分に対応するために学んできたサービス業に関する知識から現状を分析して、適切な助言をすることができるようになりたいと思っている。
 
これからの仕事には、交渉力、適応力などの能力が必要であると考える。交渉力とは、相手の企業から自分の企業に有利な条件を引き出させたり、商品を販売する時に顧客を納得させる能力で、適応力とは顧客のニーズの変化や新しい企業スタイルに適応したり、会社の同僚や上司、顧客との間に信頼関係を築くために必要な能力であると思われる。
 
このように、卒業後は販売士の学習で学んだ流通業や小売業に関する知識、接客マナーを最大限に活用することで、サービス業やコンサルタント業の企業に就職したいと思う。