タイガースよ蘇れ

ーわが社の人材育成と販売士への期待-

大阪・㈱阪神百貨店お客様相談室専任主任 鈴木 栄子

タイガースフィーバーに沸き立ち、実に140万人のお客様にご来店を頂いた「阪神タイガース優勝セール」を経験したのは1985年のことでした。その興奮とトラ景気の波及効果を身をもって実感した社員は既に定年を迎え多くの人が会社を去りました。

しかし、「お客様本位」の精神はしっかりと新世代に受け継がれています。百貨店には長い年月をかけて培われた“信用”という財産があり、この財産は先人のたゆまぬ経営努力の賜物であります。信用を重んじ一層の信頼を頂ける百貨店づくりをするには、戦力となるべき優秀な人材が絶対不可欠です。

当社では人材の育成、社員教育は人事部能力開発課が綿密なカリキュラムの基に「OJT」「OFF-JT」という形で教育指導を行っています。加えて、幅広い学習内容の通信教育(120余の講座)が社員1,330名の自己啓発支援として用意され、通信教育修了時には受講料の半額が会社から補助されます。

中でも毎回受講者が多いのは「販売士コース」で、入社1年目の新入社員から中堅社員と年代的にも幅がありますが、講座の修了率も90%を超え熱心に学習に取り組んでいます。また、合格率も年々増加の傾向にあり、社内の販売士有資格者は、3級27名、2級130名、1級6名になりました。自己啓発に熱心で勤勉な社員が多く、この人たちの懸命な勉励努力は称賛に値するものであると私は誇らしげに思っています。

受験対策に当たっては、能力開発課のリーダー(担当主任)が会場の設定、受験の申込み手続きとキメ細かい配慮と便宜を図っています。終日講師を務めるのは私で、今年で12回目の講座となります。当初はたった5名から始めた勉強会でしたが、数年前からは毎回20~30名余りの人が受講し、合格率も80%をクリアし、過去数回は大阪での最高得点合格者も出ています。合格後は人事部に資格者として登録されますが、残念なことに資格手当等の給料アップにはつながっていませんが、販売士のテキストは社内の昇格試験対策の教科書としても大いに活用されています。

私は38歳にして入社し売場で販売の難しさと喜びを経験後、お客様相談室に異動いたしましたが、その間「販売士」をはじめ他の資格取得に努力を重ねて参りました。結果として、社内外で販売を実践した講師としての評価を頂戴することが出来たと思っています。そして、受験者の立場で難易度を把握した解説が出来るのは私の得意技であると自負するところです。

百貨店を取り巻く環境は厳しく営業時間の延長等で学習時間が制約されてきていますが、「厳しさのない中からは、何も生まれてきません」、これが私の持論です。昨今は、まさにハイテク時代でありますが、お客様が本当に望んでおられるのはハイタッチの接客、豊かな商品知識、洗練された販売技術です。顧客満足の視点からも、勉強好きで素直な販売士が多数誕生することを切に願っています。社内販売士の増加は必ず顧客の信頼を得て企業の発展、売上げ増加につながるものと確信しています。最後に声を大にして言いたいこと「社内販売士よ胸を張れ」と。もう一言「タイガースよ蘇れ」・・・・・・これは多くのファンの悲願であります。

(登録講師)
『販売士』2001年9月号