販売士学習でディスカッション力がアップ

校舎

【6つの学科をもつ県立高校】
埼玉県立越谷総合技術高等学校は、電子機械科、情報技術科、流通経済科、情報処理科、服飾デザイン科、食物調理科の6つの学科を擁する総合技術高校である。学科がフロアごとに分かれることから、校舎内の展示物も、機械からファッションまで幅広く、歩いているとコック帽をかぶった生徒ともすれ違うユニークな高校となっている。

【販売士受験の伝統】
流通経済科は「販売のスペシャリスト」を目指すことを目的としており、その過程として、販売士検定を取るという伝統がある。販売士受験を「全員必修」としている高校は県内でも少なく、他の商業高校と比較しての越谷総合技術高校の流通経済科の「目玉」ともなっている。生徒も保護者も販売士が取れることを事前に知った上で志望しているという。

【実社会と連動して考えさせる販売士学習】
新採2年目(2019年8月時点)の水落翼教諭は、越谷総合技術高校で販売士を学んだOBでもあり、まさに「母校で販売士を学んだ教員が、母校の生徒に販売士を教えている高校」といえる。販売士の学習指導について、水落教諭にインタビューを行った。

「越谷総合技術高校のカリキュラムでは、1年次から販売士の2月受験に挑戦していますが、『検定を取るだけ』にならないよう、『実社会と連動した講義』を重視しています。今流行っている『デザインバーコード』のある商品を探したり、夏休みに陳列を見て来るといった宿題を出しています。」

水落教諭は、マーケティングにおける「立地」に関する分野の学習でも、「越谷のここの地点に店を建てるなら?」というテーマで、生徒たちに商圏や人口、年齢構成、交通量を調べさせ、ディスカッションに取り組んでいるという。

「郊外立地をテーマにした課題では、ホームセンターという意見が多い中、『駐車場を広く取ったコンビニを建てる』と答えた子がいました。販売士の学習は、生徒の様々な意見が自由に出せるのでいい教材なのです。」

【研究・発表に注力】
このように、検定だけでなくアクティブな「考える学び」を重視している点が越谷総合技術高校全体の特色である。商業科の課題研究(ゼミ)は、全国的に検定対策に使っている高校も多い中、すべての学科で発表させることを学校を挙げて重視している越谷総合技術高校では、「研究」や「発表」の場づくりを積極的に行っている。

課題研究1

「インスタグラムで越谷をPRしたり、パン屋さんにレシピ提案を持っていったり、積極的に行政や企業といった実社会に生徒をつなげています。こういう活動が販売士の知識を生かす場づくりになると思っています。」

課題研究では提案に留まらず、越谷市役所とはスタンプラリーの実施や、生徒デザインのLINEスタンプ(越谷のイチゴスタンプ)を提供したほか、上記のパン店に対しては新商品のPOPやポスターも作成している。

課題研究1

【生徒を成長させる販売士】
 最後に生徒たちを見ていて感じられる「販売士学習の効果」を伺った。

「検定だけがゴールではなく、販売士の知識でいろいろな活動をさせていく中で、生徒たちの視野が広がり、意見が色々出るようになったのが大きいです。お店へ行ったときに『あ~コレが勉強したやつか!』と、そういう気づきが学びにつながるからです。」

 販売士検定に対する期待を水落教諭はこう語る。

「自分から興味を持って学べる子に向いている検定だと思います。もっと知名度が上がって、価値を感じ続けられる資格になってほしいですね!」

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【取材を終えて】
 高校の商業科を訪問していて感じることは、検定合格で終わるのではなく、課題研究などの実践活動に販売士の知識をつなげている点である。検定そのものの普及だけではなく、「検定を活用した魅力あるカリキュラム」ならびに「カリキュラムをプロデュースする教員の存在」こそが、販売士の価値を高めているのだと実感した。
 最後に水落教諭並びに越谷総合技術高校をご紹介いただいた、埼玉県立浦和商業高校の鈴木友也教諭(水落教諭の恩師)に心より感謝申し上げたい。

<2019・2020年度広報委員 高見啓一>

学校概要

学校名 埼玉県立越谷総合技術高等学校
所在地 〒343-0856 埼玉県越谷市谷中町3丁目100番地1
設立 1986年4月
設置学科 電子機械科、情報技術科、流通経済科、情報処理科、服飾デザイン科、食物調理科

在籍生徒数 713名(2019年4月1日現在)

リテールマーケテイング(販売士)検定試験合格者数

2018年度 2級1名、3級10名