資格を活用した社員の育成

会社外観

株式会社パレットは、1986年10月、「手創りのお菓子 パレット」として創業、1988年5月に有限会社を設立、2007年5月に株式会社に組織変更。現在、大津市に4店舗(うち1店舗はカフェ)、草津市に2店舗を展開している。
資格を活用した社員育成について、同社代表取締役社長の前田省三氏にお話を伺った。

前田社長

《代表取締役社長 前田省三氏》

技術職の育成

洋菓子業界では、一般的に、新卒社員の「3年定着率」が3~4割で、6~7割は離職してしまいます。しかし、当社に関しては、現在、定着率が8割を超えています。要因の一つとして、当社の人材育成の仕組みに、3年目の国家資格取得支援と段階的な社内技術検定があると考えられます。
一般的にケーキ屋では、「良い商品」「良い接客」が大切です。経営においては、材料費、労務費の2つのコストのコントロールが重要です。特に、人件費に関連して、私は、通常は3~5年かかる職人(技術職)の育成を1~2年に短縮できないかということを考え、そのための技術の標準化を考えました。具体的には、日々の仕事での数値化です。
しかし、数値化された工程でできるようになっても、職人の技術を支える「自己信頼」とのつながりが弱いことがわかりました。つまり、作ることはできるものの、自分の技術に自信が持てず、その人の中で揺れているのです。それが、日々のケーキの出来栄えも安定しないことに連鎖していくことになります。核心は、主体的な内発的動機「お菓子作りが好き」でなければ、経営者が求める「職人の早い成長」は、期待できないことがわかってきました。
一般的に、菓子職人の国家資格は、1級菓子製造技能士(洋菓子)、2級菓子製造技能士(洋菓子)があります。このような国家資格取得を技術職として成長するための外発的動機付けとして活用することを考えました。山本五十六の言葉に、「やって見せ 言って聞かせて させてみせ 褒めてやらねば 人は動かじ」がありますが、私は、率先垂範のため、2000年に社員と一緒に1級菓子製造技能士資格を受験して取得しました。その後、当社では、入社して3年目までに2級菓子製造技能士に合格すること、さらには、資格を持っていることが当たり前だという組織文化が育ちました。

洋菓子製造

販売職の育成

技術職と同様に、販売職のスキルアップにも資格取得を活用することを考えましたが、なかなか、技術職でのような効果は見えませんでした。ある年、「ヴァンドゥーズ」に合格した社員が、「認定バッジ」を付けて仕事をしているとお客様に「かっこいい」などと褒めていただいたり、他のスタッフから「私もほしい」などという声が上がったりしたことから、社内での資格取得への潮目が変わりました。「私も受けようかな」と、言うアルバイトさんが2級販売士に合格して、社員だったら持っていることが必須要件という空気感に変わってきました。結果ですが、販売職においても「自分で自分の価値を上げる」という考えが根付きました。
当社では、新人からベテランまで、菓子製造技能士1級・2級だけでなく、製菓衛生師、栄養士などの国家資格を取得しています。さらに、日商簿記3級、ビジネス会計、販売士2級・3級などにもチャレンジしています。「ヴァンドゥーズ」もその一例で、女性の洋菓子販売職のための、高度で幅広いお菓子の専門知識、技能も併せ持った「お菓子を専門に販売するプロフェッショナル」の資格です。商業ラッピング検定3級以上で、2年以上の実務経験など、受験資格を満たした2名の販売スタッフが認定されました。資格取得へのチャレンジは、その人の自分の仕事の領域を広げるきっかけづくりになるのと、向上心につながっていくと思います。この空気感が「人が育つ組織文化」となって、パレットの中での定着率向上につながっていると考えます。
国の働き方改革の一環として、2019年度から年5日の年次有給休暇の取得が義務付けられています。また、当社は、女性社員が約8割であることから、産前産後休業や育児休業取得への対応が重要です。このため「一人三役多能工」の人材育成をすすめると3期前の経営計画書で方向性を示し、取り組みをはじめました。一人三役多能工の考えは、例えば、製造職の人が、販売ヘルプも、カフェヘルプもできる。販売職の人でも、自分の勤務している店にとどまらず、他に2店舗のヘルプができるなど、解釈は限定的ではない。しかし、その日一日をなんとかしのいだらいいというアマチュアレベルではなく、きちんとポジションを守れるプロとしての目線で、製造職でも販売士資格取得を進めています。

ヴァンドゥーズ

《ヴァンドゥーズに合格した社員》

資格取得支援を給与規定とつなげる

人事制度として、一般職から技術職に昇格する際の必須要件に、2級菓子製造技能士の取得を加え、あわせて、入社後3年間の段階的な技術向上を目的として社内での技術検定制度を整備しました。「資格手当支給によって自分の価値を高めて、その価値を提供することで自分の給料は自分で上げろ!」と「自己満足的な職人的発想」から、抜け出るように、年齢給には重きを置かず、職能給と資格手当を重視した給与規定を作りました。
社員は、一般職、技術職、監督職の順に昇格するわけですが、一般職から技術職への昇格の際は、菓子製造技能士2級と販売士3級、また、技術職から監督職に昇格する際は、菓子製造技能士1級と販売士2級と日商簿記3級の取得が必須要件です。
現在、当社には販売士2級取得者が3名、販売士3級取得者が6名、ヴァンドゥーズ取得者が2名います。資格を取得した社員には、毎月、資格手当を支給しています。

滋賀短期大学での販売士資格の活用

私は、2005年から、滋賀短期大学で非常勤講師を務めており、現在も製菓・製パンコースで「製菓基礎実習(洋菓子)」を担当しています。
雇用する側の目線からの気づきです。短期大学が製菓製造の専門課程教育だけで、即戦力を求める業界のオーナーたちのニーズにこたえていない。更に、送り出す側の教育者の立場から、なんとか社会に出てからの3年のデスバレー(死の谷)を超えてほしいと思います。同短期大学に対して、製菓製造の専門課程に加えて、販売士資格の取得を勧めて社会に出ての即戦力化で、居場所が見いだせない見習いから、居場所のある見習いへ転換させていく。結果として「活躍できる人材育成」につながることを訴え、2017年から、同コースに店舗経営(販売士3級取得)の単位が設置されました。2018年からは、必須単位になりました。

滋賀短期大学

資格取得の意義

滋賀短期大学の製菓・製パンコースでは、製菓衛生士資格取得がコース受講の目的の一つです。この資格の合格率は約50%、販売士3級合格率も約50%です。単純に、これらの2つの資格を持っている学生は確率的に25%程度。4人に一人です。最大でも50%です。付加価値のある資格取得者が即戦力の人財として社会で生き残る確率が高くなります。
同じように、「人が育つ組織文化を育む」ためには、社員が顧客満足を高めるためのプロセスを楽しむことができる「やればできる」自負心を経験学習する。同時に、頑張った自分への自己信頼感から生まれる「自尊心」を育みます。人が育つ上で大切な「心」を経験学習する環境を自分たちで作る!と、トップが明確な方針と目的を示してあげることでゆっくりと変化が始まります。
販売・接客のスペシャリストとして道を選ぶのも、商品の企画開発や販売促進を担う店舗マネージャーとしてジェネラリストの道を選ぶのも、本人次第です。

販売員にとって最も大切なこと

プロの販売員として必要なのは洞察力です。目の前のお客様に近づいて寄り添い、笑顔にすることが最も大切と考えています。
当社の販売員には、例えば、バースデーケーキをお渡しするときに、「誕生日おめでとうございます。すてきな誕生日になるとよいですね」などと、お客様の気持ちに寄り添う言葉を添える接客のプロになってくださいと、教えています。つまり「自分がされたら嬉しいことをする」が販売に立つ人の心得として伝えています。

会社概要等

会社名 株式会社パレット
本社所在地 〒520-002 滋賀県大津市皇子が丘3丁目3-23
代表者 代表取締役社長 前田省三
従業員数 従業員55名(うち、正社員28名、アルバイト・パート27名。2019年8月現在)
資本金 1,000万円
設立 1988年(昭和63年)5月
事業内容 洋菓子製造販売

販売士有資格者 2019年8月現在

【販売士有資格者数】2級3名、3級6名