農業の6次産業化を取り入れた教育課程で食品販売を学習する

神奈川県立中央農業高等学校校舎

神奈川県立中央農業高等学校は、1906年(明治39年)4月の創立で、110年を超える歴史と伝統を誇る農業高校である。同県の県立高校の中で最も広い敷地を有し、温室、水田、畑地、牛舎、豚舎、鶏舎を含め、施設が充実している。
園芸科学科、畜産科学科、農業総合科の3学科が設置され、同校は、「学力・農業専門性の向上」、「体験重視の教育」、「自立した学習者の育成」、「いのちを尊重する教育」の4項目を教育目標に掲げ、生徒の育成に取り組んでいる。
今回の事例では、農業総合科の取組について紹介する。

正門

農業総合科では、3年間を通して、農作物の生産から食品加工、流通販売までを総合的に学ぶ。2年生からは、「生産・販売類型」、「食品製造類型」、「栄養化学類型」、「流通・経営類型」の4つの専門分野に分かれ、より専門的な学習に取り組む。また、安全で健康に役立つ商品や付加価値の高い商品を提供するため、地産地消を意識し、生産から販売までを実践的に学習する。

「流通・経営類型」の2年生の必修科目の一つが、同校独自の「学校設定科目」である「食料販売」であり、約1年にわたり、外部講師を招いてリテールマーケティング(販売士)3級検定試験の学習内容を学んでいる。生徒は、学習の達成度を図る目的を兼ねて、2月に同検定を受験する。

授業風景

同校農業総合科の総括教諭であり、科目「食料販売」を担当する伊藤文喜氏に学習の意義を語っていただいた。
「当科の特色は、科目『食資源科学』を中心に、農業の『6次産業化*』を学習することにあります。なかでも、『流通・経営類型』では、農家やスーパーマーケットなどの販売店の経営や広告・PR方法を学習し、実際に、販売現場に就職する生徒もいます。このため、科目『食品販売』で流通・小売分野の専門知識である販売士3級の学習内容の授業と、ほぼ毎月、年度内に20回程度実施する『販売実習』での経験は、極めて有益であると考えています。」
*6次産業化とは、1次産業:農業、2次産業:製造業、3次産業:小売業等が、総合的・一体的に、地域資源を活用して新たな付加価値を生み出すことを目的に連携して行う取組(1次×2次×3次=6次)。

販売実習1

「販売実習」は、同校内およびイオン海老名店の敷地内で実施されており、同校の産品である野菜・果物・花き、ジャム・菓子等の加工食品、肉・卵などを販売し、地域の住民より好評を得ている。

販売実習2

販売実習3

※授業風景は、日本販売士協会登録講師の武石美則氏による「食料販売」の授業で、野菜、ジャム・洋菓子、花きの写真は、同校内の販売実習会場で撮影。

学校概要等

学校名 神奈川県立中央農業高等学校
所在地 〒243-0422 神奈川県海老名市中新田4-12-1
創立 1906年(明治39年)4月
設置学科 園芸科学科、畜産科学科、農業総合科
在籍生徒数 2018年度 577名