企業の成長を支える販売士の知識
株式会社千疋屋総本店は、1834年(天保5年)の創業。183年の歴史を有する東京・日本橋に本店を構える老舗果物店で、東京都内に12店舗、神奈川県内に3店舗、千葉県・埼玉県に各1店舗、南関東に計17店舗を展開している(2017年12月現在)。
同社は、のれん分けした㈱京橋千疋屋(1881年創業)、㈱銀座千疋屋(1894年創業)との3社で、協調関係に基づく千疋屋グループを構成している。
同社での販売士資格を活用した人材育成等について、代表取締役社長の大島博氏にお話を伺った。
販売士資格活用の経緯
私が販売士資格を知ったのは、20年以上前に東京商工会議所での活動を始めてからです。その後、東京商工会議所の議員を務めるとともに、2006年(平成18年)に東京販売士協会会長に就任し、2009年(平成21年)には日本販売士協会の会長に就任して、協会活動に深く関わるようになりました。販売士の方々と交流し、販売士制度を知れば知るほど、小売業に非常に役に立つ資格であるという認識を深めました。
販売士は、流通・小売分野で唯一の公的資格で、販売・接客の技術、在庫管理からマーケティング、労務・経営管理に至る幅広い知識が身につきます。当社では、12~13年前頃から現在に至るまで、新入社員は、入社した年の7月に3級検定試験を受験することになっています。
学習・販売士資格取得の意義
当社の場合、商品が贈答用のフルーツで、お客様のご要望を伺って、予算に合わせて詰め合わせを考えたり、用途によって詰め合わせる商品を変えたりするため、接客が極めて大事な仕事です。特に、接客に必要な幅広い知識を身に付ける目的で、販売士資格が役に立っていることを実感しています。接客だけではなく、品ぞろえ、ディスプレイなどについても学べます。例えば、毎日の朝礼で、報告や情報交換、打合せを行いますが、修得した知識や用語が社内での「共通言語」となり、コミュニケーションも円滑になりました。
さらに、販売士資格を取得し、知識とスキルが身に付くと、お客様へのアプローチの仕方がわかり、自信を持って接客することができるようになります。販売員としてのやる気や誇りを持つことができ、より一層、仕事を楽しめるようになります。
学習・販売士資格取得の効果
当社は年中無休の営業で、シフト制で店舗運営をしているため、全社員を一堂に集めて研修会やセミナーを開催することができません。一方、検定試験を活用すると、受験に備え、テキストを読んで、自分で勉強しますので、セミナーを受講するよりも効率的に知識を習得することができます。
公式テキストである「販売士ハンドブック」は5冊(5科目分)で構成されていてボリュームがありますが、新入社員は売り場で働いていますので、内容を理解しやすく、知識も修得しやすいと言えます。
現在、正社員約250名中、3級が89名、2級が20名です。販売士3級の取得が店長になるための要件となっていますが、店長の多くは2級を取得しています。
販売士など資格取得への支援
当社は江戸時代の創業ということで、社員が江戸時代の文化について知識を身に付け、接客に役立てられるよう、江戸歴史文化検定の受験を奨励しています。そのほか、日商簿記も含め様々な資格・検定試験の受験を奨励し、合格者には報奨金を授与しています。
当社は小売業ですから、中でも販売士資格に一番力を入れており、公式テキスト(販売士ハンドブック)代と検定試験受験料を支給しています。販売士資格取得者への報奨金は、3級が3万円、2級が5万円、1級が10万円です。同時に、社内で合格者を発表してモチベーションアップを図っています。
「リテールマーケティング(販売士)3級検定試験」の前には、毎年、東京販売士協会に依頼し、受験対策の「直前セミナー」を開催しています。検定試験のある7月は、お中元の時期で繁忙期ですが、受験者は時間を捻出して一生懸命勉強しています。直前セミナーの効果もあり、毎年、当社の新入社員は、受験者全体の合格率よりも高い合格率を達成しています。
社員への期待
社員は、資格取得も含め、同じ職場の中でも、同期の中でも競い合っています。お互い切磋琢磨しあって、よりよいものを目指すというのが、企業の成長の原点です。
当社の営業テーマは「お客様満足度100%」です。お客様に、千疋屋で買ってよかったと言っていただけることが最高の褒め言葉です。そう言っていただけるかどうかで、販売士の力量が試されます。販売員自らが店のイメージを作っていることを自覚し、それを常に意識して売場に立つことが重要です。
会社概要等
会社名 | 株式会社千疋屋総本店 |
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本社所在地 | 〒103-0022 東京都中央区日本橋室町2-4-1 |
代表者 | 代表取締役社長 大島 博 |
従業員数 | 248名(2017年12月現在) |
資本金 | 3,250万円 |
創業 | 1834年(天保5年) |
創業 | 1938年(昭和13年) |
事業内容 | 果物・洋菓子・アイスクリーム・瓶詰・缶詰・洋酒の販売、飲食店業(フルーツパーラー) |