販売員の人材育成に販売士2級を活用
株式会社美十のあゆみは、1938年(昭和13年)の純喫茶「美十」の開店に始まる。その後、菓子小売店を開業して1949年に八ッ橋の販売を開始、1965年には「さか井屋」として株式会社化し、翌年、つぶあん入り生八つ橋“おたべ”を発売した。株式会社設立50周年である2015年に、<次の100年を目指すために、創業原点を大切にし、いつまでも忘れることのないように>と願いを込めて、1969年以来の社名である「株式会社おたべ」から、創業時の店名を用いた「株式会社美十」へと変更した。
同社は、京都銘菓つぶあん入り生八つ橋“おたべ”の製造販売にとどまらず、「おいしさをはこび よろこびを創る」を経営理念に掲げ、現在では、「大阪往来館(大阪土産)」や「東京往来館(東京土産)」等の観光みやげ製造販売、テーマパークへクッキー等の菓子提供、OEM商品の製造、そして、新ブランド事業として「洋菓子ぎをんさかい(“京ばあむ”等)」(京都)、「タントマリー」(東京)、「エピナール」(大阪)などの洋菓子店舗運営をはじめ、宇治茶の老舗「辻利」とのコラボレーションによる商品の製造販売に至るまで、幅広い事業展開を図っている。
同社の人材育成や人事制度への販売士資格の活用等について、同社人事部教育課の桐山みゆき氏にお話を伺った。
当社の職種と人材育成
当社には、4つの職種(総合職および「販売」・「製造」・「デザイナー」の3分野の専任職)があります。
販売を担当するスタッフ(以下、「販売員」)の中にはゼネラリストを目指す総合職とスペシャリストを目指す専任職がおり、特に専任職については「販売が好きで販売を極めたい」「販売に携わりたい」という方を採用しています。
当社の経営理念「おいしさをはこび よろこびを創る」のもと、お客様にこれまで以上に美味しいお菓子とそれに関わる思い出の時間を提供することを目指し、販売員を強化するため、2012年度から販売員研修に力を入れており、2014年には販売員一人ひとりが店長やグループマネジャーを目指してキャリアアップできるよう店長制度もスタートしました。現在では店舗数や売上も拡大していて、販売員の人材育成の取り組みも、その一助として効果をあげているものと認識しています。
検定試験の活用
当社では、以前から社員に日商簿記3級を取得してもらうという取り組みを行っています。例えば、上司に数字を踏まえた報告を求められた場合など、新入社員であっても、数値的な意味合いを理解して対応できるよう、最低限の知識を身に付けることが目的です。また、部下を持てる等級に昇格する際の要件として、簿記3級を必須としており、現在、ほぼ全ての社員が取得しています。
また、十数年前(2004年)に京都商工会議所が創設した「京都・観光文化検定」についても、営業部を中心に受験する取り組みを行っています。当社は、京都でお土産やお菓子を販売していることから、お客様から京都に関するご質問があった際にお答えできるよう、最低限の知識を身に付けることを目的としています。
さらに、2008年度から営業部が自主的に、お客様に販売するにあたっての最低限の知識を身につけるため、販売士検定2級受験の取り組みを始めました。
リテールマーケティング(販売士)検定試験の活用
特に近年、商品やブランドを拡大するなかで、店舗数も増加し、改めて、各店舗を強化していきたいということで、2014年度に「店長制度」が創設されました。もともと、各店舗でリーダー的な位置づけの販売員が実質的に店長の役割を担当していましたが、店長という職位は設けていませんでした。職位を明確にすることで、販売員一人ひとりが店長やグループマネジャーを目指してキャリアアップできるようにもなりました。
この制度において、京都・観光文化検定3級と販売士検定2級取得を店長になるための要件としました。
リテールマーケティング(販売士)検定試験の学習は、「販売士ハンドブック」を推薦教材として紹介していますが、どのような教材を選び、どのようにして学習に取り組むかについては、本人の自主性に任せています。ただし、会社として教材購入費用は全額負担し、検定試験に合格すれば受験料も支給しています。
現在の取り組みの評価と今後の目標
店長制度という職位制度ができ、販売員として目指すところが明確化し、評価のための指標が定められたことは、販売員のモチベーション向上に繋がっていると考えます。また、店長や先輩が自ら率先垂範しなければならないという意識づけにもなっていると思います。検定に関しては、どんなに小さいことであっても、やるべきことをきちんとやることによって、周りの社員から認められ、後輩の信頼が得られるという点で非常に大切な取り組みだと感じています。
当社には現在、自社の販売員を配置している店舗が京都府内で32店舗、全体で約196店舗あります。しかし、1人の店長が複数店舗の店長を兼任しているケースや店長を配置できていない店舗もあり、自社の販売員が直接お客様に美味しいお菓子とそれに関わる思い出の時間を提供できるよう、1店舗に1店長を配置できる体制にしていくことが当面の目標のひとつです。そして、ゆくゆくは販売員を指導するインストラクターを社内で育成し、販売員のさらなる販売力向上を目指しています。
会社概要等
会社名 | 株式会社美十 |
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本社所在地 | 〒601-8446 京都市南区国道十条西入ル北側 |
代表者 | 代表取締役社長 酒井 宏彰 |
従業員数 | 社員240名、パートタイマー454名(社員換算)(2017年4月1日現在) |
資本金 | 5,000万円 |
創業 | 1938年 |
事業内容 | 和洋菓子製造販売 |