社員の自己啓発に販売士資格を活用

銀座マギー外観

株式会社銀座マギーは、1956年(昭和31年)、婦人服地店として創業し、2016年に60周年を迎えた老舗の婦人服専門店である。同社は、創業以来、日本人の本質にある「粋」の視点で、優雅で気品ある洗練されたスタイルを追求した「ジャパネスク・ヨーロピアン・エレガンス」をコンセプトに、「銀座マギー」のほか、「バウレットキー」、「POOL STUDIO」など多彩なブランドを展開している。
同社人事総務部を訪問し、人材育成における販売士資格の活用等についてお話を伺うとともに、社内の販売士有資格者の方へのインタビューを行った。

<人事・総務部 部長 中村司さん>

社内での販売士資格の活用

社内で確認したところ、販売士資格取得者に資格手当を出したのは20年以上前のことだったようです。目的は、社員のレベルアップ、スキルアップです。社外でも通用する資格として、販売士は、社員の知識や技能を評価する、ひとつの基準になると考えます。
当社では、通信教育講座の受講による販売士資格の取得を推奨しており、リテールマーケティング(販売士)検定試験に合格し、それに値する知識と技能を習得したことを評価する趣旨で、資格手当を支給しています。

<執行役員 人事・総務部 CS・教育担当部長 三田伸子さん>

自己啓発の奨励と支援

毎年、「自己啓発のための通信教育講座ガイドブック」を作成し、巻頭には、植松伸一社長の人材育成に対する思いや社員の成長に対する期待を込められたメッセージを掲載しています。内容としては、販売士などの資格取得のほか、店舗のマネジメント、CS・接客、キャリアデザインなどの分野の講座を盛り込んでいます。社員には必ずガイドブックに目を通してもらえるよう主体的に取り組んでほしいという気持ちを込めて、一人ひとりに名前入りで配布しています。

ガイドブック

通信教育のテキストでの学習を終了し課題レポートを提出して合格すると、受講者に修了証を交付するとともに、受講料の半額に相当する金額の「奨励金」を授与しています。特にリテールマーケティング(販売士)検定試験に合格すると、毎月、1級で1万円、2級で5千円、3級で2千円の資格手当を支給しています。従来、この資格手当の支給対象は店舗スタッフで本部スタッフは対象外でした。しかし、本部スタッフも店舗応援のため店頭に立ちますので、2015年からは有資格者であれば資格手当を支給しています。
販売士有資格者数は、1級が1名、2級が16名、3級が15名の計32名です。合格後は上級の資格を目指すケースが多く、3年前に2級に合格して今年は1級にチャレンジする社員もいます。

三田さん

社員の自己啓発の取り組みと効果

今年度、販売士1級にチャレンジする社員がおります。その社員は、3年前に販売士2級に合格したことからモチベーションが上がり、2年前に「SC接客ロールプレイングコンテスト」(一般社団法人日本ショッピングセンター協会主催)の支部大会に出場しました。そして見事、「SC接客マイスター」の資格を取得しました。今年はコンテストへの出場は休みにして、販売士1級資格取得に取り組んでいます。自己啓発に積極的な社員をみると、概して店舗での売り上げもアップしており、他の様々なことにもチャレンジをするなど、とても意欲的です。
2012年からは社員教育にも積極的に取り組んでいます。社内には、店長経験者に加え、様々なスキルを持ったスタッフがおり、毎年、社内で実施している「Maggy’sロールプレイングコンテスト」の審査員、新入社員研修、フォローアップ研修等の講師を協力し合って行っています。社内ロールプレイングコンテストや毎月の研修は必ずフィードバックすることを心がけています。情報共有することで問題点があればすぐに解決できますし、社内で取り組むことに多くのメリットもあります。
今回のインタビューにお答えする店舗スタッフ(岡崎亜美さん)には、今年から実施する社内研修の講師を担当してもらっています。

<統括本部 部長代理 堀井英樹さん(販売士1級)>

統括本部での職務

統括本部では、幅広くさまざまな職務がありますが、最も重要なものは、年間の収支を想定したうえで、営業支援計画を立案することです。また、人事プロジェクトを策定する委員会のメンバーとしての役割も担っています。

堀井さん

販売士資格取得の経緯

2016年9月に現在の部署に異動するまで、店長を務めていました。店長就任後、接客やマーケティングなど、いろいろな分野を、書籍で独学していましたが、分野に偏りがあり、知識が断片的なものになりがちであることに不満を感じていました。そこで、流通・小売業界のことを体系的に学びたいと考え、先輩社員からの勧めもあり、当社が奨励している販売士資格に取り組みました。

販売士1級の知識の活用

販売士1級は、難しいだけに、修得した知識は、マーケティングや人事などを含め、仕事に活用できる内容であると評価しています。
例えば、出店している商業施設からダイレクトメールの送付先について照会があった際は、販売士1級の知識である、最新購買日・購買頻度・累計購買金額から顧客の購買履歴を分析する「RFM分析」を活用して対応しています。

販売士資格取得に向けた学習のメリットなど

仕事をしていて得られる知識には限界があります。販売士のテキストで学習すると、幅広い角度から、小売・流通業で必要な内容を学べます。学んでいる中で、いろいろな気づきも得られます。業界の知識を体系的に学ぶことにより、視野も広がります。また、仕事への興味、モチベーションも上昇します。
わが社を含め、ファッション業界においては、売上も大事ですがが、利益を確保しなければならないという課題があります。若手の社員まで、利益構造を理解していれば、仕事に対するやり方もかわっていくのではないかと思います。
少し大げさな言い方ですが、販売士の資格に取り組まなければ、今の自分はなかったかもしれません。
今後も、販売士の学習で修得した知識をさらに深掘りし、自身の成長はもちろんのことですが、会社の発展、さらには、業界の発展に、少しでも貢献できればと思っています。

< MAGGY玉川高島屋本館店 主任 岡崎亜美さん(販売士3級)>

店舗での業務

接客がメインですが、ディスプレイ、ラック組み、商品補充などいろいろな仕事があります。店舗では、5名のスタッフが交代で勤務し、役割分担もしていますが、全員が全ての業務をできるように取り組んでいます。

岡崎さん

販売士資格取得の経緯など

販売の仕事に従事するなかで、販売士を取得すると必ず自分のためになると考えてチャレンジしました。
3級は基本的な内容で、流通・販売に関するさまざまな仕組みや考え方、店舗での業務の流れなど、必要な知識を得ることができました。例えば、POSシステム、発注の際のデータが流れる仕組みなどを理解したことが印象に残っています。そのほか、陳列や照明についても参考になりました。
資格取得から数年経った今、改めてテキストを見直してみるといろいろな再発見がありました。このことから視野が広がっていることも実感できました。

会社概要等

会社名 株式会社銀座マギー
本社所在地 〒145-8533 東京都大田区田園調布1-33-1
代表者 代表取締役社長 植松 伸一
従業員数 367名(男性80人、女性287人)
売上高 70億円(2016年8月)
資本金 9,750万円
創業 1956年
設立 1957年1月
事業内容 婦人服、服地の企画・販売及び小物、アクセサリー等の販売

販売士有資格者数 2017年5月現在

1級1名、2級16名、3級15名