全従業員に販売士資格取得の学習を推奨

店舗外観

株式会社マルシメは、秋田県横手市で、1950年に酒類の小売店として創業、1961年に有限会社を設立してスーパーマーケットを開業、1973年に株式会社に組織変更されて今日に至る。
現在は、総合スーパー「スーパーモールラッキー」とスーパーマーケット「マルシメ七日町店」等を運営している。
同社は、「これまでも、これからも、消費者、生産者、従業員のための生活を応援します。」を理念として掲げ、小売業などの事業に加え、人口減少が急速に進む地域の様々な課題の解決のため、地域活性化を支援する取り組みを継続している。
同社を訪問し、経営企画室人事担当・業務本部副部長の山口拓也氏、経営企画室CSR担当の奥ちひろ氏にお話をお聞きした。

山口氏、奥氏

山口氏(左)、奥氏(右)

【地域への貢献のためのCSR活動】

当社では、企業理念のもと、食料品をはじめとした生活必需品等を販売・提供していますが、人口減少が進み、地域の困り事は多様化しています。創業以来、地域の皆様に支えられてきた企業として、地域の元気を創出するため、様々なCSR活動を行っています。
取り組みの一環として、公共交通機関の運用が縮小となって買い物が困難になっている地区が増えていることから、平日の5日間、14の路線にわたる「お買い物バス」を運行しています。
このほかにも、特別養護老人ホームでの出張販売、縁日など地域のイベントへの協賛や社員の派遣、店内での体操教室やサークル活動への会場提供などを実施しています。さらには、高齢者向けに電球交換や網戸張替えなどの困りごとを解決するお客様サポート事業や健康志向の弁当を配達する配食事業等も行っています。

売場1

【スーパーモールラッキーでの売場づくり】

スーパーモールラッキーの店内には、地元農家直売の「ファーマーズマーケット」を開設しました。地産地消、食の安全という観点で、横手市周辺の優良な「契約農家」から直接買い付けた農産物を販売しています。これも、地域の課題解決とビジネスをどのようにして結びつけるかというCSRの一環で、農家の収入をいかに増やすかという観点で始めた事業です。
同店では、例えば、アウトドア用品など、県内ではここでしか買えない、珍しい、こだわりの商品を扱っている売場・部門がいくつもあります。また、各売り場では、土日を中心にワークショップや実演販売などの体験型イベントを実施しています。

売場2

【新店舗の展開】

2019年6月には、秋田市にグローサリーストア(食品雑貨店)の「NEED THE PLACE」を開業しました。約30坪でコンビニ程度の広さの新店舗です。マクロビオティック (玄米などの穀物を主食とする長寿法) やビーガン(完全菜食主義)を好む方への商品のほか、ラッキーへ出品している農家さん等が作った新鮮な野菜を取り扱い、販路を広げています。

【人材育成の取り組み】

当社では、個人のチャレンジを応援することで挑戦できる風土を地域に作りたいと考えています。それは社内においても同じで、挑戦意欲のある前向きな従業員を増やしていくために、資格取得も含めたチャレンジを後押しする取り組みを進めています。
社内では、数年前から社内のプロジェクトが増えてきています。トップダウンの意思決定ではなく、いかに現場からの意見を形にしていくかということを重視して取り組んでいます。例えば、あいさつ運動を推進するような委員会や若手で構成されるCSR推進委員会があります。かつては、全従業員が参加して会社をよくするための取り組みを創出していくような社内委員会もありました。今では、そのような活動に取り組んだ社員が30、40代を迎え、部門長やバイヤーとして活躍しています。
次の段階として、従業員に必要な知識や経験を身につける目的で、後ほど述べる販売士資格取得の支援制度が導入されました。また、従業員には、出張に行くことを通じて見識を深めてもらっています。商談の場合もありますが、研修会への参加、マーケットリサーチのための店舗視察を通じて当社は何を吸収できるか、という視点で学ばせています。出張は、自分で企画することもあれば、上長から勧められる場合もあります。上長が勧める場合は、何を見てきてほしいかなど、ミッションを提示するケースが多いです。戻ってきてから報告書をまとめてもらい、経営層まで報告が上がるという流れになっています。

【販売士資格の活用】

昨今、多様な働き方をする方が多く、当社では、正社員とパートナー(パートタイマー)の比率は3:7です。これまではパートナーにも評価基準を設けて年1回の査定で時給を上げていました。しかし、近年、最低賃金が上昇してきて、時給の引き上げにも限界が出てきました。それで、何らかのかたちで従業員の頑張りを評価したいということで、その手段のひとつとして販売士資格取得にチャレンジしてもらう。その場合、通信教育講座受講料と受験料を会社が全額負担することを強調して進めています。
努力して販売士を取得した結果に報いるため、毎月、資格手当を支給しています。モチベーションアップのために、1級の場合は1万円、2級の場合は5千円という金額を設定しました。
ただし、目的は検定試験に合格してもらうこと自体ではなく、その過程で勉強してもらうことが重要だと考えています。勉強の成果として販売戦略を検討する際に知識を活用してもらいたいし、ミーティングの際の共通言語を増やしてもらいたいと思います。横文字の用語が多いですが、習得してもらうことによって、社内のレベルの底上げにもつながってくると思います。
2019年度では、7月の検定試験で17名、2020年2月の検定試験で12名が2級を取得しました。これで、2級の有資格者は29名となり、全従業員200名の14.5%〇となりました。
2級が不合格となり、再挑戦する従業員、また、2級に合格後、1級に挑戦する従業員もいて、向上心が芽生えてきたと感じています。今後も引き続き、販売士資格の取得者を増やしていきたいと考えます。

会社概要等

会社名 株式会社マルシメ
本社所在地 〒019-0505 秋田県横手市十文字町仁井田字東22-1
代表者 代表取締役 遠藤 宗一郎
従業員数 200名(2020年8月現在)
資本金 5,000万円
創業 1950年
設立 1961年7月
事業内容 食料品・衣料品・日用雑貨・住関連商品等の販売、飲食店の経営、冠婚葬祭、各種宴会等の会場運営、住宅の販売、自動車並びに自動車部品・付属品および工具の販売、店舗売場の賃貸業、不動産の賃貸・管理・保有・運用、等

販売士有資格者数

1級1名、2級29名(2020年4月現在)