販売士をマンガで学び、人間力を実習で学ぶ

校舎1

【商業科の「強豪」揃いの岐阜県の中にあって 特色で勝負】
「商業科といえば岐阜県」というくらい、簿記を中心に資格の強豪校がそろう岐阜県の高校にあって、販売士を学ばせている岐阜城北高校総合学科ビジネス専攻では「他所がやっていないこと」「岐阜城北にしかできないこと」を模索してきた。

「本校は商業科ではなく『総合学科』なので、簿記・情報処理・ビジネスにプラスして、美術や音楽の系列もあるのが強みです。さらに『生活文化科』が併設されており、ファッション・保育・調理を専攻する学生もいます。このセットがそろっている高校は県下に1校しかないんです」(ビジネス系列主任 井口貢志教諭)

校舎2

【販売実習Co-Marketで「つなぐ」人間力】
この強みを生かせるのが特色ある販売実習「城北Co-Market」である。このイベントは、熊本震災復興のために熊本商業高校と連携し、熊本の商品を岐阜で売り、岐阜の商品を熊本で売るようになったのをきっかけに始まり、いまでは全国の都道府県の商品を仕入れて販売している。

「仕入先との交渉・プレゼンテーションは生徒にやらせています。教員からは生徒たちの教育のため、企業様に対して『話にならなかったら断ってもらってOKです』と、あえて伝えています。」(井口貢志教諭)

販売実習では、販売士を学ぶビジネス専攻の生徒が企画を考え、店舗づくりは芸術分野の生徒と連携し、商品開発は食生活の生徒と連携しているという。実社会でのビジネスを意識し、仕入先との交渉に加えて、校内での交渉のプロセスも経験させることで、人間力を高めているのである。

「販売実習では『社長』を決めて生徒が自分たちで動かしますし、他系列に役割を分担してもらうためのプレゼンテーションもします。実習の振り返りでは毎年『人とのやり取りに苦労した』という感想が出てきます。ビジネス系列の『売り』はいろいろな『専門家』をつなげる役割なので、『人をつなげる役割』を大切にしています。」(井口貢志教諭)

校舎3

【マンガで学ぶ販売士】
販売士検定(リテールマーケティング)の学習については、マーケティング分野の科目で取り組んでおり、2年次の2月に3級を、3年次の7月に2級を受験させている。実社会・実店舗のイメージを大切にする学びで、多数の合格者を輩出してきた。

「『解く』科目の簿記と違って、販売士は『覚える』科目なので、問題をやりこむよりも『イメージすること』が大事だと思っています。身近なお店でイメージしてみたり、販売実習で知識を使ったりしています。」(販売士指導教科担当 三尾弘子講師)

三尾講師は、日本販売士協会広報委員である高見啓一著作のマンガ『戦う商業高校生リテールマーケティング戦隊』を、教材として活用している。

「生徒の『興味づけ』『学習のきっかけづくり』にマンガを使いたかったのです。授業の時間を増やしても合格率は高まらないので、生徒自身の学びへの興味をどうもたせるかが重要だと思っています。授業でも『マンガでこういうシーンあったでしょ?』と具体例を出してみたり、『キャラクター』や『必殺技』で用語を覚える生徒がいたり、役立っています。」(三尾弘子講師)

書籍

【人をつなげる販売士 新しい挑戦へ】
販売士では接客技術やマナーも学ぶが、秘書検定も生徒に取らせている岐阜城北高校では、礼儀やマナーの指導も大切にしている。

「商業の仕事は『人を笑顔にして人をつなげる』ことだと思います。そのため、人と関わるうえでの礼儀やマナーも大事にしています。」(三尾弘子講師)

「ビジネス系列では、新たに世界を超えて『人』をつないでいます。2020年度の販売実習に向けて、市内企業のベトナム人技能実習生、中国人技能実習生と協力し、ベトナムや中国の商品を売る計画です。企業の方からも実習生の学びの機会になると歓迎いただいています。」(井口貢志教諭)

この企画には、販売士2級合格者の3名(『販売士』2020年6月号の販売士アイドルに掲載)の3名の生徒が参画しており、協力に先だっての学校紹介をベトナム語と中国語で実施したという。販売士の価値と可能性の再認識につながりそうな実践である。

校舎4

【販売士制度への期待】
最後に販売士制度に関する今後の期待をお伺いした。

「岐阜県の高校では『販売士』の存在自体は知られていますが、『合格するとどうなれる?』ということが生徒のモチベーションに重要だと思っています。『こんな企業が取ってるよ!』『資格給がつくよ!』とか、そういう情報を知りたいですし、私たちももっと伝えていきたいです。それと、生徒たちがマンガの続編を楽しみにしていました。」(三尾弘子講師)

岐阜城北高校の「高校生販売士」は、特色ある教育・実践で、実社会に通用する「人間力」を高めている。このような生徒を採用できる企業は非常に幸運であり、そのような企業とのマッチングを増やしていくことが、販売士制度に期待されるだろう。

<2019・2020年度広報委員 高見啓一>

学校概要

総合学科、生活文化科

学校名 岐阜県立岐阜城北高等学校
所在地 〒502-0004 岐阜県岐阜市三田洞465-1
設立 2004年4月(岐阜三田高等学校と岐阜藍川高等学校が統合)
設置学科 総合学科、生活文化科
在籍生徒数 674名(2020年4月1日現在)

リテールマーケテイング(販売士)検定試験合格者数

2019年度 2級8名、3級19名
2018年度 2級7名、3級32名
2017年度 2級4名、3級22名